適王の啓発記 全ての家庭へ ~知られざる 不登校・ひきこもり引き出し業者の闇~

                                    

#5 アイ・メンタルスクール死亡事件 ~悪質業者の異常性~

民間の不登校・ひきこもり引き出し悪質業者(暴力的引き出し屋)の実態と被害者の存在が明らかになってきている。

 

ジャーナリストの加藤順子(かとうよりこ)さんが詳しく追っている。

 

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/cefa5c2c705794331f27d519654341a2a3493b02

 

被害当事者の恐怖と理不尽、苦痛がどれほどのものだったか。

その怒りは闇に埋もれ、時に訴訟となって噴出している。

 

不登校・ひきこもり引き出し悪質業者が起こした事件で世間に最も知られているものは、戸塚宏がいまだに運営している「戸塚ヨットスクール」による致死事件であろう。

この戸塚宏が刑期を経て出所してきたというニュースが報じられた時と同じくして、同じ名古屋の引き出し業者による事件と裁判があった。

杉浦昌子が運営していた「アイ・メンタルスクール」による死亡事件と、長田百合子が運営していた「有限会社 塾教育学院(長田塾/八事寮)」に対して損害賠償を請求した通称「長田塾裁判」である。

 

奇しくも杉浦昌子長田百合子は姉妹であった。

2人が姉妹であることは、地元名古屋の関係者の間ではよく知られていたようだ(*1)。

長田百合子は当時マスコミに取り上げられていたこともあり、事件と裁判は雑誌(『週刊ポスト』『週刊朝日』『中央公論』)に大々的に掲載された(*2)。

 

まずアイ・メンタルスクール死亡事件とは、民間の不登校・ひきこもり引き出し業者であるアイ・メンタルスクールが、不登校・ひきこもりの若者を強制連行した挙げ句、収容していた監禁施設で26歳の男性を外傷性ショックで死亡させた事件である。

アイ・メンタルスクールによる人間の尊厳を無視した行為の実態は次々に明らかになった。

強制収容施設の中は、施錠された二重扉でふさがれた大部屋の存在や、この部屋を見学者には隠していたこと、家族との連絡の禁止、労働の強制など、問題点が次々に露見した(*3)。

 

この犯罪には悪質業者アイ・メンタルスクールのスタッフと(おそらく洗脳されていた)入所者も含めた複数人が関わっていた。

職員(28)と入所者の男性(27)は起訴猶予

元職員の男性2人(いずれも28歳)の両被告にいずれも懲役3年、執行猶予4年(いずれも求刑懲役5年)、

元職員の男性(24)は懲役2年6ヵ月、執行猶予4年(求刑懲役3年)、

逮捕監禁致死罪に問われた代表の杉浦昌子被告は懲役4年(求刑懲役8年)が言い渡されている(*4)。

 

第2回の公判では、アイ・メンタルスクールから押収されたビデオを検察が証拠書類として放映している(*5)。

杉浦昌子がスタッフに指示して撮影させたものである。

1人の若者を数人のスタッフで突如取り囲み、怒号が飛び、押さえつけられ、強迫され、挙げ句に拘束具を利用して車の中へ強引に拉致するという生々しいシーンである。

若者当事者はどれほどの恐怖であったことだろう。

 

この映像を法廷で見た情報センターISISネットワーク代表の山田孝明氏は、想像を遥かに越えた恐ろしさで、それを表現する言葉が見つからず、息を飲み込むだけが精一杯だったとのことだ。

そして、杉浦昌子がこのような映像を撮影させた理由は、依頼を受けた親に見せる為だったのか、あるいは若いスタッフの教育の為だったのか不明であるが、杉浦昌子の中に何かすでに一線を越えた感覚があり、共犯として参加した者全てが秘密を共有し、お互いの感覚を麻痺させるには、ビデオ撮影は十分に効果があり、このようにして最初に暴力が肯定され、そして隠蔽された組織や密室ではエスカレートしていくものだ、と回想している(*5)。

 

また、同じく第2回公判では、ビデオに続き検察側から杉浦昌子とスタッフ間の連絡ノートが証拠書類として提出された(*6)。

その中には杉浦昌子が運営するアイ・メンタルスクール強制収容施設に連行された若者の一部を評して、

 

「あいつはケダモノだ!」

 

クラミジア(*)と一緒に自殺しろと伝えて下さい」

クラミジア感染症とは、クラミジアという細菌に感染することにより、さまざまな症状が起こる病気のこと。

クラミジア感染症のなかでもっとも多いのは、性感染症のひとつである性器クラミジア感染症。ほとんどは性行為により、体液や血液を介して性器や喉の粘膜に感染する。

 

オウム真理教に連れて行ってポア(*)されなければならない」

*ポアとは、オウム真理教教祖の麻原彰晃が、自らの関与した殺人をその被害者が自身の悪業により地獄に堕ちるのを防ぐだけでなく、より高い世界へ転生させる為であるとして使用した用語。

 

などの書き付けがあることが口頭で知らされた。

 

考えられないことである。

そして怒りを禁じ得ない。

 

悪質業者アイ・メンタルスクールの杉浦昌子が主導していた不登校・ひきこもりの改善ビジネスの実態は、人権や人間の尊厳を無視し剥奪したあり得ない思想と発言、行為であり、言うまでもなく支援・指導等といったものとは相容れない次元のものであった。

 

誰でも被害者になりうる。

これらは近年の日本の主要都市の片隅で実際に起きていた重大な事件・犯罪である。

 

あらためて皆様にお願いしたい。

現在子育てをしていらっしゃる方、

家族や親族に不登校や引きこもりの人がいらっしゃる方、

このような民間の不登校・引きこもり引き出し業者には必ず裏があるので絶対に利用しないでほしい。

そして知人に同様の悩みを抱えてらっしゃる方がいれば、注意喚起の事例としてお伝えしてあげてほしい。

 

 

*1~6『引きこもり狩り』 芹沢俊介編 雲母書房 2007

 



適王